不倫に対する慰謝料請求

 ここでは、当事務所にも相談の多い不倫の慰謝料請求についてまとめてみました。
なお、ここで挙げているのは一般論ですので、ご了承ください。

慰謝料ってそもそも何?

 例えば交通事故に遇った場合を考えてみます。
前をよく見て走行してところ、突然信号無視の車に衝突され、重症を負ったとします。
この場合、破損した車代、入院費、治療費、仕事に行けない間の逸失利益(仕事ができませんので、事故に遇わなかったら稼げたあろうお金)など物的な被害について、相手に請求することはもちろん、「痛かった」「つらい入院生活を送らねばならない」など精神的な苦痛に対しても請求することができます。
こうした精神的苦痛に対する賠償を慰謝料といいます。

 不倫に関して言えば、当然不倫された側は少なからず精神的苦痛を負いますので、請求できる場合があります。

ポイント 慰謝料とは精神的な苦痛に対する賠償金である。

不倫に対する慰謝料請求

 夫婦はお互いに夫としての権利、妻としての権利を有しています。
またお互いに貞操義務があります。
不倫は配偶者としての権利を侵害する行為ですので、
不倫(不貞行為)は民法709条でいう不法行為に当たります。

民法709条(原文はカタカタですが、読みやすく直してあります)
故意又は過失によって他人の権利を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責めに任ず

この条文は非常に重要です。

ポイント 慰謝料請求の根拠は民法709条(不法行為)

不貞行為とは?

 不倫問題で専門書、ネット等でよく出てくる言葉が、不貞行為や貞操義務といった言葉ですが、
意外と誤解されていますので、この際整理しておきますと、

アイコン不貞行為・・・
  配偶者以外の異性と肉体関係・性的関係を結ぶこと。

アイコン貞操義務・・・
  不貞行為をしないこと=配偶者以外の異性と肉体関係・性的関係を結ばないこと

を言います。よってメール交換をしている、一緒に食事に行ったなどは不貞行為とはいいません。

不貞行為は裁判上の離婚原因となる

 裁判により離婚が成立する場合があります。
民法770条1項では「配偶者に不貞な行為があったとき」と明示されています。
よって正当な離婚原因となります。
慰謝料との関係でまとめてみると、

配偶者に対して・・・離婚及び慰謝料請求ができる。
不倫相手に対して・・・慰謝料請求ができる。

ということになります。

浮気・不倫・不貞行為?

 民法には不貞行為という言葉はありますが、浮気・不倫という民法上の記載はありません。
そもそも浮気・不倫・不貞行為がそれぞれ何を指すのかは、人により基準が異なり、必ずしも明確ではありません。
(特に浮気は「単に他の異性と会う」〜「肉体関係を持つまで」、いろいろな使われ方をしています)
線引きを議論したところで実がありませんので、
慰謝料請求の対象となる行為について考える必要
があります。
よってこれ以降、これらの行為を単に不倫と表現することにします。

ポイント 不倫相手にも慰謝料請求ができる場合がある。

慰謝料請求の対象となる不倫とは?

 配偶者が不倫をしているから、不倫相手に慰謝料請求できるかといえば、必ずしもそうではありません。
いろいろ条件が必要です。
これらを満たしていないと、不倫相手から名誉毀損、恐喝等で逆に損害賠償の訴えを起こされる場合があります。
不倫相手に対する慰謝料請求は慎重に検討すべきです。
一般には以下の4条件が必要とされます。

アイコン不法行為(民法709条)に該当すること
 
民法709条では、故意または過失によって他人の権利を侵害したものは、
これによって生じた損害を賠償する責めに任ず」とされています。
これを不倫相手に対する慰謝料請求の場合に置きなおしてみると、

相手に配偶者がいることを知っていた(故意)、または配偶者がいることを容易に知ることができた状況にあった(過失)にも関わらず、不貞行為に及び、配偶者としての権利を侵害した者に慰謝料を請求できる

と読みなおすことができます。

 よって不倫相手が、相手に夫や妻がいることを知っていた、または容易に知ることができた場合のみが対象です。
なぜか?
配偶者の存在をしらない場合、不倫相手としてはあくまで恋愛であり、不倫をしている認識はないため。

アイコン不貞行為があったこと
 
肉体関係があったことです。
メールの返信や一緒に食事をしたことは対象となりません。

アイコン時効にかかっていないこと
 
不法行為の請求権は3年で消滅しますので、請求は知ったときから3年以内であることが必要です。

アイコン夫婦関係が破綻していないこと
 
破綻しているかどうかの判断は難しいですが、別居状態ではまず無理です。

ポイント 特に1番目の要件に注意!

女(男)の勘では請求しない

 慰謝料請求は上記4つの条件が必要とされますが、実際問題重要となるのが、不倫の確証があるということです。
「どうも不倫してそうだ」という、女(男)の勘だけで不倫相手に請求してはいけません。
証拠がなくとも相手が認めれば、請求は可能ですが、不倫を認めない場合、もしくは全くの事実無根だった場合、逆に名誉毀損、恐喝等で訴えられる可能性があります。
やはりなんらかの証拠が必要でしょう。
(場合によっては探偵利用も←但し一般には高額です。)

(当事務所では探偵及び興信所の紹介・斡旋はしておりません)

慰謝料請求額

 「先生、慰謝料はどれくらい請求したらいいですか?」とよく聞かれます。
(ほぼ毎回ですが)
正直、少し返答に困ります。
慰謝料は精神的損害ですので、本人以外は推して知るぐらいしかできません。
なので、
私はこれぐらいの苦痛を受けたとご本人が算定された額が最も適当です。
もう少しいうと、不倫の慰謝料の算定基準はありません。
おそらくどこの事務所に行っても「この額にしたらどうですか?」と額を提示してくることはないと思います。

 一般には精神的苦痛の程度はもちろん、被害者の地位、収入、不倫相手の地位、収入、結婚期間、子供の有無等さまざまな要素が絡んでくるので、
慰謝料額表などという基準になるものを現実にはつくれないのです。
よって誰が聞いても、あまりにも高額な慰謝料(数千万〜数億)以外は妥当とされます。
(請求したはいいが、あまりにも高額のため、相手が払ってくれないのでは意味がありませんので)
不倫相手に対する慰謝料は50万〜300万程度が多いかなとは思います。

ポイント 不倫の慰謝料請求には明確な基準はない

内容証明を送ってみる

 不倫相手に対する慰謝料請求は多くの場合、まず内容証明郵便で請求します。
相手に「私は本気である」ということを強く主張することができます。
(ただしうらみつらみの文章はよくないです)

*よくない例
「あなたはひどい女(男)だ」「慰謝料を支払わない場合、会社にいられなくします」等

訴訟までいかなくとも、内容証明の段階で支払ってくれることもありますし、
当事者による示談交渉、民事調停で解決する場合が多いです。

 内容証明郵便はあくまで手紙ですので、法的拘束力はありませんが、内容証明はきっかけとなります。
できれば即、訴訟は控えた方がよいでしょう。
相手との話し合いが成立したら示談書を作成しておくとよいと思います。
民事調停手続は、本人でも問題なくできます。

ポイント うらみつらみ・脅迫的な内容はNG

自分で書かれる場合の注意点

 内容証明に関する本は多数出ています。正直どの本にするか、選ぶだけでも大変です。
文例はあくまで一般的な例ですので、
自分のケースに応じて内容をある程度書き換える必要もあります。
また、意外と不倫相手に対する慰謝料請求は載っているようで載っていません。

 上でも解説しましたが、うらみ・つらみ・脅迫的な内容にならないように十分注意する必要があります。
冷静に、あくまで淡々と相手に主張するようにしましょう。

 また、離婚した離婚を前提としている)場合と、よりを戻す場合では書き方を若干変えた方がよいかと思います。
書きようによっては、また不倫相手が言い寄ってくる可能性がありますので。
(申し訳ございませんが、このご依頼後の打ち合わせの段階でご説明いたします。)

ご相談・ご依頼は

 初回メール相談は無料です。電話相談も短時間ならお受けしております。
(ただし具体的な内容証明の文例を無償で提供することはできませんので、ご了承ください)
行政書士には守秘義務がありますので、ご安心ください。
(事例紹介と称して匿名で具体的なケースを公表している所もありますが、当事務所は行いません。)
ご相談・ご依頼は本人からに限ります。
匿名、第三者のご相談・ご依頼はできません。

作成・提出報酬

通常の場合・・・21,000円となっております。
郵便料金、行政書士の記名・押印、提出代行費すべて込みです。
成功報酬ももちろん不要です。

行政書士が取り扱えない内容

 以下は、行政書士法で取扱が禁止されておりますので、弁護士にご相談ください。

  • 相手が不倫を全く認めず、徹底的に争う場合
  • すでに裁判に発展している場合
  • 裁判上の手続の代理
  • 相手との交渉代理

捕捉

ちょっと気になる疑問点をまとめてみました。

ちょっとした疑問その1・・・男性の慰謝料請求

 不倫の慰謝料と聞くと、夫に妻以外の女性ができて、
妻がその不倫相手に慰謝料を請求するというイメージがあるかと思いますが、男性(夫)も請求できます。
男だから精神的にタフということはありません。
例・・・妻に夫以外の男性ができて、夫がその不倫相手に慰謝料を請求する。

ちょっとした疑問その2・・・離婚が慰謝料請求の条件?

 では、ありません。
不倫(不貞行為)自体が不法行為であり、損害賠償の対象となりますので、不倫が原因で離婚したかどうかに関わらず、不倫相手に慰謝料は請求することができます。
(ただし離婚に至らなかった場合は、離婚した場合に比べ、慰謝料額は低くなるでしょう)

ちょっとした疑問その3・・・内縁関係の場合はどうなる?

 我が国の裁判例及び行政上の取扱いについては内縁関係を夫婦に準じた取扱いをしています。
よって基本的には内縁関係解消にともなう慰謝料請求が可能ですが、同棲や共同生活との関係もあり、実際にはそのケースごとに判断されるというとになるでしょう。

ちょっとした疑問その4・・・配偶者と離婚してくれない愛人に対する慰謝料請求?

 「今の配偶者と別れて一緒になろう」と不倫相手がいうので、
ずっと不倫関係のまま待っていたが、結局は現在の配偶者とよりを戻して、自分とは結婚してくれなかった場合、相手に対して慰謝料請求できるのでしょうか?
(結婚してくれると信じていたのに、裏切られたことに対する慰謝料)

 確かに理論的にはできそうな感じですが、よく考えてみると
貴方の行為はこのページで解説している「不倫に対する慰謝料請求に該当しませんか?
つまり慰謝料を請求するどころか、逆にされる立場にあります。

よって相手方配偶者から請求が来ない以上、
敢えて請求して、返り討ちに遇うことは避けた方が賢明だと私は思います。

ちょっとした疑問その5・・・不倫を理由に退職を迫れるか?

 不倫相手と配偶者が同じ職場ということは多くあります。
この場合配偶者としては、慰謝料うんぬんより、同じ職場にいて欲しくない=その職場を辞めて欲しいと思うことも多いかと思います。
しかし、法的には相手に不倫を理由として離職を強制することはできません。
そこで世間ではいろいろ別の手段でなんとか辞めさそうとするのですが、私個人は正直お勧めいたしません。

アイコン職場の上司に報告して、懲戒解雇してもらう。

 職場によっては就業規則等で、不倫により事業所の取引先との信頼を著しく傷つけた場合には懲戒解雇などと、不倫による懲戒解雇規定を設けているところもありるので、報告するのもありですが・・・

問題点・・・

  • プライベートな問題なので、実際には事業所もそれを理由に解雇しにくい。
  • 就業規則等で明確な規定がないと難しい。
  • 労働局のあっせんの対象外。
  • ご主人(奥様)の職場での立場が悪くなる、仕事をしづらくなる、ペナルティが課されることもある。

なので、これはお勧めしません。

アイコン慰謝料請求しない代わりに、職場を辞めるとの念書をとらす。

問題点・・・

  • 実際に職場を辞めない場合、法的に強制できない。
  • 慰謝料請求権を一旦放棄すると、原則回復できない。
    (相手方の約束違反を理由にできるとの解釈もありますが)
  • そもそも、それで納得することは多くない。

ので、あまりお勧めいたしません。

不倫した側の回答書も内容証明で書くことができます。
(案件によってはお受けできない場合もありますのでご了承ください)

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