訪問販売に関するトラブル前編

 訪問販売をめぐるトラブルとその問題点を、具体的事案に当てはめて検討してみました。
同じようなケースでも置かれた状況はさまざまですので、同じ対処法が通用しない場合もあります。
ご了承ください。

ケース1

 ある日、「料理教室があるので来ない?」と誘われ、会場に行ったところ、講習終了後、鍋を販売していた。
皆買うので、私もその流れでつい購入してしまった。

 しかし、よくよく考えてみると、鍋は買ったばかりだし、買った鍋を使ってみたが、正直他の安い鍋と変わらない。
やっぱり必要ないと思い、翌日、業者にクーリングオフしたい旨を申し出たが、

「一度使ったんでしょ?それはダメですね。もう新品では売れないし」
「どうしてもって言うなら、解約料もらえれば応じますけど?」
「あ、そうそうその場合でも送料はお宅負担でお願いね」

などと言われ、諦めてしまった。
*鍋はクーリングオフできる指定商品である。法定書面の交付もあったものとする。

アイコンこのケースのポイント

  1. 「一度使ったんでしょ?それはダメですね」
  2. 「どうしてもっていうなら、解約料もらえれば応じますけど?」
  3. 「あ、そうそうその場合でも送料はお宅負担でお願いね」

いずれの業者の主張も正しくありません。

1について

 確かに使用すると、クーリングオフができなくなるものがあります。
(詳しくはケース2で)
ですが、鍋はそれらに含まれていないため、例え使用後であってもクーリングオフが可能です。
クーリングオフ制度は消費者に与えられた権利なので、それに伴う「使用されて戻ってくるというリスク」を業者は当然に負うことになります。

2について

 クーリングオフによって生じた損害を業者は一切、消費者に請求することはできません。
解約料・違約金・返品手数料等いかなる名目をもってしても認められていません。
「中古で買取りますよ?」なども当然ダメです。

3について

 商品を返還するための費用は、事業者が負担することになります。
よって引き取りにきてもらうか、協議のうえ、代金着払いで返送します。
なお使用後も現状のまま引き渡せばよいとされています。
しかしクーリングオフをしたら、これ以上商品は使用しないで、いつでも返せるようにしておくべきでしょう。

 なお業者のような説明は、消費者の無知に付け込んだ悪質な手口ですので、クーリングオフ妨害として、クーリングオフ期間の延長が認められますし(2004年改正)、行政処分の対象となります。

 クーリングオフ制度が法律によって保証されている以上、業者は使用されて戻ってくるリスク、返品に伴う費用を負担することが当然とされています。

ケース2

 ある日、セールスマンが化粧品の訪問販売に来ました。
買う気はなかったのですが、セールスマンがしつこく勧めてくるので、とりあえず化粧品セットを購入しました。
「実際にご自分のお肌で試してみてはいかがですか?」と言われたので、とりあえず試しに1ビン開封して使ってみました。

 やっぱりよくよく考えたら高い買い物だったので、クーリングオフしようと思い、業者に内容証明郵便で通知しようと思ったのですが、契約書をよくみると、「化粧品は、使用したときはクーリングオフできません」と書いています。

 ちょっと詳しい人に聞いてみると、やはり健康食品・化粧品の類は使用するとクーリングオフすることができないらしいのです。
自分からすすんで使ったわけではない
のに、なんだか釈然としません。

 もし仮にクーリングオフできないとしても、使ったのは1ビンだけですので、他の分は返品してその代金を戻してもらいたいのですが?

アイコンこのケースのポイント

  1. 確かに1ビン開封して使ったが、セールスマンに「使ってみては?」と言われたので使ってみただけ。
  2. 「化粧品は使用したときは、クーリングオフできません」と書面に書いてある。
  3. 使ったのは、1ビンだけで、化粧品セットのうち、他のものは一切使っていない。

1、2をまとめて検討してみます。

 確かに、使用するとクーリングオフができなくなるものが定められています。政令で定めているので、これを一般に「政令指定商品」と言います。

 政令指定商品とは、健康食品・化粧品・毛髪用品・せっけん・コンドーム・生理用品・防虫剤・殺虫剤・防臭剤・脱臭剤・履物などが該当します。
今回のケースの場合、確かに使用するとクーリングオフできない商品に入っています。

 しかしクーリングオフできない場合とは、以下の2ついずれも満たしたときのみです。

ア 交付された書面に「使用するとクーリングオフできなくなる」との記載があること
イ 消費者が、購入後自分から使用していること

のどちらともに該当しなくてはなりません。

 アに関しては、確かに書面に「使用するとクーリングオフできない」との記載がありますので、該当します。
もしこの記載がなければ、例え使用してしまった場合でも、問題なくクーリングオフできます。

 イに関しては、該当しません。
今回のケースの場合、消費者がビンを開けて使用したのは、「使ってみては?」
と言われたので、試しに使ってみただけで、消費者の方から敢えて使ったわけではありません。
よってこの場合は「試用」に当たると考えられます。

 業者の中には、言葉巧みに「ぜひ使ってみてください」と強引に開封させる場合があります。
これは「商品を開封したのだからクーリングオフはできない。契約書にも書いてあるでしょ」と消費者を言いくるめるのが主な目的であると思われます。
これはあくまで「試用」であり、クーリングオフは問題なく成立します。

3について

 使ったのは1ビンです。
業者の中には「あれはセットで販売しているんでねぇ、一本では売ってないのよ。
全部使ってないならクーリングオフできたんだけどねぇ」などと言う業者もありますが、そういう業者の勝手な理屈は通用しません。
通常の小売単位で計算します。
化粧品は通常1ビンでも小売されているので、1ビン単位で計算すればよいとされています。

 よって仮に自分の意志で1ビン使ったとしても、残りについてはクーリングオフできます。
(このケースでは自分の意思で使ってはいないので全てクーリングオフできます)

ケース3

 なんと前回来た化粧品販売業者がまた来たのです。
ちなみに前回はあれからクーリングオフできました。
なのにまた同じ業者が化粧品を売りにきたのです。
またしつこく勧誘してくるのです。
結局また買ってしまいました。
そこで今回もクーリングオフをすることにしました。
(もちろん内容証明郵便で)

 しかし、今回はこのように内容証明郵便で回答してきました。
「店舗販売業者が消費者の自宅を訪問して販売をした場合には、
過去1年間にその事業に関して取引のあった顧客との取引の場合は訪問販売には該当しないと特定商取引法に規定しております。今回、貴方様との契約は2回目ですので、訪問販売には該当せずクーリングオフはできません。商品代金の支払いよろしくお願いいたします。」

とのこと。
確かに前回取引があったことは事実なので、今回はちょっとダメかなと思います。

アイコンこのケースのポイント

  1. 前回、一度同じ業者に対してクーリングオフしたことがある。
  2. 前回取引があった場合は、訪問販売ではなくクーリングオフできないという。

 1度被害にあった人が繰り返し被害にあうこともよくあります。
今回もクーリングオフしようと思ったところ今回のケースのように言われて、納得してしまう場合も多くあります。

 確かに特定商取引法は、一定回数以上の取引がある場合は、
訪問販売に該当せずクーリングオフは適用されないと定めています。
しかし取引とは「信頼関係に基づく健全な取引」であることが必要とされています。
前回はクーリングオフしたので、それをもって健全な取引があったとみることは
当然できません。

よって今回もクーリングオフ可能です。

 一度クーリングオフしたから「もう来ない」とは思わない方がよいでしょう。
業者は敢えてきます。
上記のように「今回はクーリングオフできない」と納得させるためです。
よくよく気をつけましょう。

* 一回訪問販売に応じてしまうと、優良顧客リスト(カモリストとも呼ばれる)に載ったり、表札に印をつけられたりすることもあります。
これを目当てに次の業者がやってくる可能性があります。
(表札に印をつけることは、テレビでも取り上げられ有名になりました。一度チェックしてみましょう。)


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